Aaki Hikaru

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虚と真が揺らぐホラー京極 夏彦『虚談』京極 夏彦

ご訪問いただきありがとうございます。ひかるです。

今回は京極夏彦先生の『虚談 (談シリーズ)』の感想・紹介です。

ホラーが大好きな私のおすすめ作品です!

※ネタバレになる恐れがありますのでご注意ください。

作品

タイトル: 虚談 (きょだん)

著  者: 京極 夏彦

発  行: 角川文庫

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あらすじ

元デザイナーで小説家の「僕」は、知人友人からよく相談を受ける。「ナッちゃんはそういうの駄目な口やろ」と笑いながら、デザイン学校時代の齢上の同輩、御木さんは奇妙な話を始めた。13歳のとき山崩れで死んだ妹が、齢老い、中学の制服を着て、仕事先と自宅に現れたというのだ。だが、彼の話は、僕の記憶と食い違っていた。(「クラス」)。

この現実と価値観を揺るがす連作集。

引用元 裏表紙より

感想

初めて「虚談」というタイトルを見た時は、単純に”嘘話し”と読み取りました。

印象的だったのは、ほとんどの話の中でどこかしらに ”嘘” という言葉が書かれていたことです。

嘘だとわかっているのに、妙に不安な気持ちになり、体温がじわじわと下がる感覚。

どこまでが真実なのか、この嘘は本当に嘘なのかと疑うことをやめられない物語展開。

淡々と語られる話は、真と虚が奇妙に混ざり合い、ある矛盾から起因する不安が、身近で現実的な恐怖へと変化する。

この”嘘”という前置きが故に不気味で、いつまでも不安を拭えないんです( ;  ; )

個人的に、目次に沿って最後まで読むことをお勧めします。

自分の記憶

記憶ってとても不確実なものだと思います。

私は幼少期の記憶の中に、家族で遊園地に行った時の映像が鮮明にあります。

だけど親に確認したところ、どうやらそんな事実はなかったようです。こわいですよね。

この作品はそんな身近な恐怖を感じさせてくれました。

 

体験してない過去だの、存在しない友人だの。

そういう虚構がふと現実になって混じってくることは、あるだろう。

引用(クラス)P143

 

自分の作り出した"虚"も、今を生きている自分のすぐそばにあるものであり、ある種の現実なのかもしれません。

 

僕は、見聞きしたから真実だと言い張る自信がない。記憶しているあらゆるものごとが真実だと断言することも出来ない。自分が知っている自分のことも、必ずしも本当とは思えない。嘘かもしれない。

もしかしたら。

今、見聞きしているこの現実らしきものこそーーー。

嘘なのかもしれないのだし。    

引用(クラス)P143

小話(夢)

これは昼寝の時に、頻繁に見る夢の話です。

一人暮らしの私の休日は、いつもダラダラと昼寝三昧。

どんな夢かというと、起きようともがくけれど、起き上がれないという夢。

体が鉛のように重くて、何度体を起こそうとしても、何かに押さえつけられているかのように動けない。寝返りもうてない。声も出ない。

その夢は、現実で起きられない自分と葛藤している姿なのか、それとも夢の中で行われている葛藤なのかはわからない。けれど、その体や思考の感覚はあまりにリアルだ。

よく脳が疲れると、このような状態になるとどこからか聞いた事がある。

そう考えると、現実寄りの出来事なのかもしれない。

目に映る部屋の景色は、今自分が寝ているベッドに違いないのだから。

そんな夢は存在しないのであろう。

この夢は20歳を過ぎた頃からこれまでに何度も見てきたが、未だに夢なのか現実なのかどちらなのかはっきりとは自分でもわからない。

だけど現実であれば、納得いかない点が1つある。

 

 

じゃあ、側でいつも自分を見下ろしているあの男は誰なんでしょうか。